エンリッチド・エアの使用により窒素という観点からダイビングの安全性を高めることができるのは確かです。 ただし、これは同条件(深度や潜水時間)で空気を使用したダイビングと比べた際の話です。 エンリッチド・エアを使用しても、エンリッチド・エア対応のダイブコンピューターで限界ぎりぎりのダイビングをすれば、 減圧症の可能性は空気と同じようにあります。 ギリギリの時間まで潜れば窒素が溜まる量が増えるということです。
また、酸素にも窒素と同じように麻酔作用があるので、空気を使用した際と同様に麻酔作用は起こりますし、 酸素分圧が高いため、酸素中毒になる危険性もあります(下記、深度制限の項を参照)。 「エンリッチド・エアを使っていれば安全」と盲目的に信じるのではなく、エンリッチド・エアの特性をきちんと理解して使うようにしましょう。
エンリッチド・エアを使用してダイビングする場合、酸素分圧が高いため、空気を使用してのダイビングよりも酸素の影響を受けやすくなります。 (もちろん窒素の影響は減ります。) そのため、酸素分圧を限界内(酸素分圧が1.4を超えない深度)に抑えて酸素中毒を避けなければなりません。 酸素中毒になると、突然、痙攣し、水中でレギュレーターが口から外れて溺れる危険性もあるので注意が必要です。
エンリッチド・エアの酸素濃度によって酸素分圧が1.4になる深度が変わります。酸素濃度が高ければ高いほど、深い深度に潜ることはできません。
目安として、エンリッチド・エア32の場合は深度30mまで(35mだと酸素分圧が1.44)、
エンリッチド・エア36の場合は深度25mまで(30mで酸素分圧が1.44)となります。
ダイブコンピュータを使うと、5m刻みではなく、もっと細かい単位で知ることができます。
上記のような注意点を認識し、エンリッチド・エアを使って安全にダイビングを楽しむために、
講習を受ける必要があります。PADIの「エンリッチド・エア・ダイバー・スペシャルティコース」では、
エンリッチド・エアを使用してダイビングを楽しむうえでのガイドラインや、
使用する器材、エアの充填、緊急時の対処法など、多くのことを学びます。
エンリッチド・エアの上記のような特性を考えると、筆記試験があることも理解できるのではないでしょうか。
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日本国内でもエンリッチド・エアを使用できる環境は広がっていますが、すべてのダイビングサービスで取り扱っているわけではありません。 また、取り扱っていても事前予約が必要な場合もあります。 事前に確認しておきましょう。
このページは、【※出典PADI】をベースに加筆修正してあります。